2002.11.15〜> 出猟日記2002

<始めに>
出来事其々には 脚色される出会いと云ったスパイスが
残る 何時か故人と成られた 多くの人々   価値観の
共有により 今尚見守りつづける 各地の友人や古老
そして 至らない我が判断を信じ 支えてくれる仲間達
其れに 忘れて成らないのが 跳びっきりのときめきを
与え続けてくれた ”山野の住人達”多くの出会いが残り
其れだけの別離も有った。


此処では 2002年度猟期での そんな出会いと出来事
日々の幾つかを抜粋して 書き残してみます。

<2002.11.24> 晴れ一時時雨
若犬二頭を付けた先犬の日本犬に 追い鳴きが入り 北側斜面を駆け下る・・・・・・・この山の尾根を
乗り越すと 犬が勘ををひきだした事で 放犬して 直ぐの事だった 見下ろす右彼方に大きく切れ込む
谷間には 二箇所の待ちを配置していた 猪はかかって呉れるだろうか! ジリジリと銃声を持つが
とうとう発砲される事は無かった 待ち場を嫌い間を抜けることで 保護区向け逃走を図ったようだ・・・
勢子の一人を 犬待ちで其処に置き 左奥で待つ三人に向け 残る若犬三頭で追い詰める事にする
勢子を下手に誘導して 自分は7〜8合目付近を横手に移動し出す 鹿の迎え撃ちと 裏山へ抜ける
ルートを塞ぐ 目に付き出した 昨夜の稼ぎ跡には くっきりと残る大物のワリ 付いて行った三頭は
無事戻って来るだろうか? ・・ガシャン ガシャン・・ 其の足音から牡鹿の大物と直感 斜面を見渡
せる 位置へと駆け下る・・・二つの白い的が まだ葉の落ち切らない木々の間を チラチラ走り抜け
銃を向けるも 引き金を落とすまでには至らなかった。   追い込んだ先の待ち場では!跳び出した
多くの鹿へと発砲! しかし無線の呼びかけにも 芳しい答えは返って来ない?
今回の猟に置いて 問題点は数多く残る 失敗を認める事で 自身の不甲斐無さを受け入れる謙虚
ささえ有れば 大物猟師としての前進は続くと思われる 其々が皆今日の悔しさを胸に押し込め
次の出番に向かわなければ。
<2002.12.1> くもり
初めて登るこの山を 鉄塔の立つ頂き目指し 尾根を這い上がる 此処のところ何処でも目立つ
風倒木は この地域にても其の例に漏れない ここぞと直感が働いた滝上の尾根筋に 若い者を
置き 更に上へ々と高度を稼ぐ 対岸の頂きを望むと すでに同じ位の高さと成って居て 谷沿いの
国道は 遥か下に見え隠れし まるで地図模型でも眺めて居る様だ! 左手の古い窯後で無数の
渡りを確認 背嚢を放り出し座り込むと 勢子に放犬を促す・・・・・・・・・・・・・
一時間ばかりして 先程分かれた若手の待ちより発砲三発  ”どうだ!” 問い掛けの返事は
撃ち掛けた鹿は 踵を返すと谷沿いに駆け下ったようで 直ぐにの追跡を制して勢子の動きを確認
猪に犬が絡み 反対方向へと逃走しだし 待ちを上げるよう指示 急峻な尾根を駆け下る・・・・・
当事者の説明を聞くと 鹿は矢を受けた様で直ぐ追跡にと入る  逃走ルートを対岸に眺め下る
やがて斜面に蹲るモノを発見 ”ガバッ!”と立ち上がった三つ又の大鹿は 再度素早く逃走に
入る ・・・発砲・・・ 其のままのスピードで 滝の頭向け滑り落ちて行く。

初めての狩山
<2002.12.1>

駆け抜けた鹿の痕跡
<2002.12.8> くもりのち雨
朝の見切りにて 猪の稼ぎ跡を確認していた事で 中待ちの立つ位置に迷いが生じた 鹿ならば
下手の開けた松林を抜けて行く 其れが猪なら暗い見通しの利かない この藪中を行く事だろう
一瞬思い悩んだ末 目的を猪に定め 暗い藪に身を沈めた・・・・・・・・・・・・・入山から暫らくたち
勢子が 此方へ向け近づき出しているのを感じる頃 足下の谷底で 石を踏み落とす”ガラガラ!”
といった音が聞こえる ”ふん 近づいて来たな?” ・・・・・・・・・・・・・まだ見ぬ相手は其の位置で
動かなく成ってしまった ・・・・数百b先の尾根裏から 犬の鳴きが入ると 再度動き出したモノは
少しづつ 私の座る位置向け上りつつ有るようだ? 立ち木越しにポッカリ開いた一点に姿を現す
黒々とした身体 角までは確認出来ないが大きな牡鹿だ! 狙う間も無く数十b下段を右に走る
”まずい 藪の向こうを切る!” 若い立ち木が連なり死角と成る ”チラチラ”見える影を銃身は追い
右下の松林へと跳び出した鹿 其の姿は銃の延長線上にしっかり捉えてはいたが 其方へ向けての
発砲は 山裾の住居へと撃ちこみ兼ねない? とうとう引き金を落とす事が出来なかった。
<2002.12.15> 晴れ
狩山の周囲を 本谷支流枝谷と 各谷沿いに七本の待ちで固めた しかしどうしても一本足らない
タイミングを見計らい 自分が車で移動する事に決めた! 二名の勢子に放犬の合図   モノは
目の前に立ち上がる斜面を駆け下らず奥山へと向かう 車に飛び乗り移動して路沿いの巨木に
身を隠す やがて激しい起し鳴きが入ると 左々へと向かう! 勢子による二発の発砲 相手は
鹿二頭 叉も奥山向け逃走したようで 若犬二頭は 其の鹿へと付いて行ってしまったようだ。
先犬の成犬が起したモノは 私の左手待ち場と待ち場の間 100bの中間を抜けたようで 発砲
する事が 叶わなかったようだ? 今回は7〜8b先の鹿を クロと見間違え見送る失態も有った
・・・いったい何やってるんだろう!・・・
<2002.12.22> 晴れ
前夜までの大雨に 今日の現地着は十時をもう過ぎていた 先週攻めた狩山内には 目標物は
残って居らず おまけに十八貫クラスの猪が 間違いなく寝ている山は 林道工事で入り口から
車を進める事が叶わない 奥の待ち場へ射手を送り出す事が出来ず やむなく対岸の奥山を
追う事と決めた! 今回は待ち場の配置をいじり 二箇所ばかり新しい場所を決めると 自身は
中待ちの尾根へと上り出した ・・・・・・ 現場着で 勢子に入山を求め しばらく待った ・・・・・
向かう右斜面から 勢子の追い声が届き出すと! 足元から立ち上がる尾根の低みを 右から
左に 跳び越える牡鹿三頭 ・・発砲・・ 308 180g ソフトポイント弾を受け 勢い良く下った鹿は
左手下に見える 林道上で崩れ落ちた。

十一ヶ月の若犬二頭
<2002.12.・・>

ドンコ(小猪)のワリ
<2002.12.29> 雨時々雪
二日前の降雪で 狩山内の林道は白に埋れていた 猪の渡り確認の為 手分けしてルートを
開ける事に成る 僅かばかり奥へ向け四駆車を進めると すでに膝丈程の 積雪と成り 何時
進退窮まる事に成っても もうおかしくない。
昨夜の痕跡の多くは鹿の物で 猪の生足へと出会うことは無かった 奥を捨て集落近くの鹿を
追って見る事にする   送り出した勢子は二台の四駆で 何とか中段の 入山地点へと付け
たようで 直ぐに猟を始める事に ・・・・・・ 先刻より激しく成り出した雨は 容赦なく待ち場の
仲間を洗い出し 雨具よりはみ出す両手をグッショリと濡らし冷え 銃を持つ手さえ痺れて来る
・・・早く持ち場の解除を してやらなければ・・・ 勢子に車方面に戻る様告げ 現状の報告を
受けた 其れによると 若犬二頭の行き先が確認出来ない 待ち場へ跳び出す可能性を考え
このキツイ状態にも 待ち場を上げる指示が下せない! 車を一台廻し捜索に掛かる 間も無く
其の中の一頭は路に出た処を回収 猟欲の高まりを感じさせ出したもう一頭が戻らない・・・・
その後奥山を徒歩での捜索にも とうとう暗く成るまで 帰って来なかった。
車から降ろした場所に 犬舎の敷物と少量の餌を残し 真っ暗に成った山中を後にした 放犬
からもう七時間も過ぎ 此処までの状況報告と流れを考えると 最悪の答えが出てしまう事が
予測され 気が重い!  飼い主の勢子にその覚悟を求めた。

・・・翌日 地元の古老と 早朝向かった二名の仲間により発見されたとの連絡に 当事者に
冷たく言い放った言葉と裏腹に ホッと胸を撫で下ろす事と成る。・・・
<2003.1.3> 雨
正月の事もあり 参加人数も少ない(病に倒れた者も若干名出た) 帰路の道路事情も考え
近場の 一山だけの猟へと出掛けた   林道沿いの見切りで 奥山を狩る事とする 早く
しないと雨が落ち出しそうだ!
勢子に入山を求め何程か過ぎた 絶妙な間隔で追い鳴きを入れるのは 今猟期一番の
成長株若犬”桜” 一度狩山頂上付近に上がり 私の中待ち向け降り向かう ”来るか!”
静かに銃の安全を外し 姿を現す向いの斜面に銃を向けた! 真っ黒な姿を雪の積もる
立ち木の間を縫い駆け下る   出切るだけ寄せる事が待ち場の鉄則だ 一度谷へと落ち
視界から消え 直ぐ私の足下段へと 顔を出した・・・・・・租点を外し 銃を下ろす ”クロか”
其のまま私をかすめ 右斜面へと消えた  若犬”桜”先犬”メリー”が 後に付いた。
私の待ち場下で 幾つもの鹿を起こし 猪を見付けた勢子による発砲も有ったが 上手く
待ち場の間を抜けられてしまう   先程から強く成り出した雪は 何時しか雨へと変わり
ついに土砂降りと成り 山中を後にした。

谷上部の待ち場<2003.1>

雪中の見切り<2003.1>
<2003.2.15>晴れ
積雪に入山を控えていた猟場を 最終日と言った事で 強行する事に成る
各配置を決め 一人々配って行き 一番の要所には今回二人の若手に任せた
西に跳ぶルートを塞ぐ為 尾根筋を西に走った 其の行程は積雪が膝まで残り
抜き上げる足が重い! 久し振りで来た待ち場は様変わりして居た 南風が
吹き抜ける谷のピークは 軒並み立ち木が薙ぎ倒され 斜面に沿い横たわる
此れでは鹿は従来のコースを避け 上か下どちらかに割れるだろう 思い悩んだ後
狙いを猪に定め 目標の岩盤を前に座り込む・・・・・・。
左の視野片隅に 尾根を走るコースを入れ 右手に延びる尾根筋を望んだ時
思わぬ障害が? モノが姿を現す方向の延長線上に 眩しく光る太陽が・・・・・
逆光を避け 太目の立ち木の陰に身を入れた。

勢子に放犬の催促 鳴きが入ったのは 隣の大谷の下部! まずい私の下は
人員が足らない事で 要所を幾つか外していた! 
立ち木の連なる尾根先に チラリと鹿の影が距離百数十b 立ち木のスクリーンに
引き金が落とせない じっと訪れるチャンスを待つ 長く短い止まったような時間
鹿は意を決すると 斜面を駆け下り出す ”いかん” 鹿は逃走ルートを下方へ取り
段々距離が遠ざかる 手前の倒木が筒先を邪魔して 的に入らない・・・・・・・・・
何時の間にか 先頭に付いた後続の二頭 遥か下の谷を横切る鹿へ狙いを定める
一頭・・・的に乗らない 二頭目・・・乗らない 三頭目・・・・・・・・・・・姿を消す寸前
引き金を引いた。

↑奥地の猟場で<2003.2.15>

積雪に鹿のワリ<2003.1>
猟期を終えて
今シーズンの総評として 使役犬の練度がまだまだと 構成員其々の役割分担
その再確認 其れが各自のステップアップに 必要と成って来るだろう。
この猟期 数々の思いも掛けない出来事に遭った 大変な事故を起してしまった人
そして終に表舞台から 去った人・・・・・何より全てを飲み込み 支え指導を絶やす
事の無かった 古老Y氏   全員無事終猟を迎える事が出来 お世話に成った
全ての人々に ・・・・・・・・感謝!・・・・・・・・・